キングレオの冒険/円居挽

つい先日FGOで虚月館シナリオを担当されて話題の(?)円居挽

 

キングレオの冒険 (文春文庫 ま 41-1)

キングレオの冒険 (文春文庫 ま 41-1)

 

 
あらすじ(裏表紙より)
京都の街で相次ぐ殺人事件。なぜか全てシャーロック・ホームズ譚を模していた。
解決に乗り出したのは、日本探偵公社の若きスター・天親獅子丸と助手の大河。
無関係に思われた事件を追っていくと謎の天才犯罪者の存在が浮かび上がってくる。
エスカレートする犯人の挑発。獅子丸は、師である老獪な名探偵と対決することに!


丸太町ルヴォワールを6,7年前に読んで以来の円居挽
あの時は「えっ、こんなネタで麻耶雄嵩からペンネームもらったあげく龍樹も借りたの……」
と麻耶信者ワイ氏大激怒の末アンチでした。
が、撤回。
多方面にごめんなさい。
帯が有栖川有栖からのコメントなんですが、火村シリーズと同じ系統ですね。
ガチガチの論理。駆け巡る京都。探偵と助手の間のいろいろと複雑なカンジ。
それにシャーロック要素を足したのがキングレオ……かな。
基本的に勘でしかミステリを読まないので、しっかりロジックをたてていくのが
全く自分で考えられなく、この系統に弱いというのはあります。
その上でキャラがたっててめちゃくちゃ面白い。好き。

 

あらすじにもあるようにシャーロックネタがいろいろありますが、シャーロック未読でも
大丈夫でした。たぶん読んでたらもっと面白かったと思います。

 

登場人物がどツボで読み終えてからずっとレオ様……とつぶやいてます。チートキャラ。好き。
最初は「俺達の熊野獅子丸を!!!かえして!!!」だったので
恐ろしい手のひらクルーですね(他人事)。
思いつく限りの最強設定にほどほどの社会人としてのギリギリラインを持ってるので
夢女にもなれる。すごい。メルカトルの夢女は犯人にされそうだもんなァ。
他にも円居ワールドキャラが出てるみたいで。
ルヴォワールの記憶がトリックのところしかないのでまた読み返します……。
逆にルヴォワールにも大河がいた……っけ……?いるらしい……ですね。
このへんは微ネタバレ含むので追記で詳しく。

 

最近読んだ中でミステリをはじめて読む人にオススメしたい小説でした。
ストレートに名探偵とその活躍。
でもほんのちょびっと新本格スメル。
そこから獅子丸元ネタ(たぶん)の麻耶雄嵩「あいにくの雨で」に行き着いてもらうと楽しいですね。

 

追記で丸太町ルヴォワール、あいにくの雨で、ロジカルデスゲーム(火村シリーズの短編)、虚無への供物を含めたネタバレ感想。
少しだけ夢女したり腐女子ムーブしたりお見合いおばさんしたりオタク感想寄り。

 

 

 

 

 

 

 


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まず登場人物のページをみて
「オイオイオイオイ論語おるやんけ」
と思ったのに日にちを分けて読んでたせいで、出てきたときにまた
「オイオイオイオイオイオイ論語おまえおまえおまえ」
となってました(鳥頭)。
あとルヴォワールの記憶がないのでルヴォワールで犯人が義出臣って出てたか忘れたんですが、
あらすじと人物紹介の図でこれはバレバレですよね。

 

各短編毎につらつらと。

 

赤影連盟

最初数行は「ロ……ロジカルデスゲーム……!」と思っちゃいました。
あまり詳しくないんですが犯人と一対一で毒薬飲んで胃洗浄するのってよくあるネタなんです?
上でも述べたように獅子丸が超人すぎるんですが
性格もある程度はできてるのがすごいですね。嫌いになれない。
死ぬほど好きなキャラに彩雲国物語の紅黎深がいるんですが
黎深も獅子丸並に天才なんですよ。でもそれゆえに性格がアレ。
例えば、"相棒"(今回は後の奥さん)を失いかけるときに
最初はお前なんかいなくても大丈夫だとかいいながら
あの手この手で阻止しつつ最後になってもお前が必要とはなかなか言わない。
(詳しくは角川ビーンズ文庫雪乃紗衣彩雲国物語」シリーズ「隣の百合は白」の地獄の沙汰も君次第を読んで。めちゃくちゃ面白いから)
だけれども、獅子丸はここが違う。
獅子丸は大河の辞職を予め分かってて、
「お前の選ぶ道が正解だ。だから何を選んでも構わない」
助手をやめて作家として新しい世界でやっていこうとする大河に
「お前は新しい世界でも楽しく過ごせそうか?」
「ならいい。もし辛くなったら、また戻ってこい」
(「でも」ということは大河が公社の仕事関連でヤイヤイ言ってても楽しんでることを
 理解している。本文中に大河は「助手サイコー!楽しい!」とは記述なし(たぶん))
獅子丸の作品が落選したことがきっかけで作家を目指していた大河に
「オレのくだらん作品のことなんか忘れろ。何も焦らずともお前にはもっと面白いものが書けるはずだ。それまでは『キングレオ』で腕を磨くんだな」
「それにお前がいなくなったら誰が『キングレオ』を書くんだ」
(結局己の助手は大河以外ありえないと考えている)
なんて言うんですよね。
はぁ。
ありとあらゆる小説キャラかっこいいとこ集めましたセットみたいな人間。
悔しいけど好き。あとイケメンだし。

 

物語としては平家敏三(塾長、賞の主催者)が犯人。賭け事の元締め。獅子丸が予定していた受賞者に大金を賭けさせたため、受賞者変更。そのためバレた。最初にある怪人アプロポスと探偵キングレオの話のリフレイン。

 


踊る人魚

最初の獅子丸と大河の話は「消費のされ方まではコントロールできない」というもので
これをミステリで言われるとはやられたな、と。
虚無への供物で言われてるみたいに事件に対して連続殺人だ!なんて思うのは
自由なんですよね。でもそれで勝手に盛り上がって事件にしたのは我々外野だ、と。
逆にお膳立てされてるものに乗らないのも自由なはずで。
でもそうやって外すと初心者向けではない、玄人向けになってしまう。
それはエンタメとしていかがなものか。
いやそもミステリをエンタメとして見るのかどうか…………。
とかナントカ。難しい。
ハイパーイケメンレオ様にデュフデュフしてる自分にも突き刺さりますね。
クソ女ムーブして申し訳ないです……。

 

で、飛んで後半。
大河(偽)の声なんて一瞬でわかるぜ!でもそれを口にするのはちょっと恥ずかしいぜ!
な獅子丸。
山風さんからはめられてイオちゃんを彼女にさせられそうになった大河を助けてくれる獅子丸。
(「虫除け」とかいってるし)
えっ……まどっち……これはそういう萌え方してもいいよね……?狙ってるよね……?
と言いたくなるくらいの探偵と助手の関係性でした。
あっ、このお話から微妙に当て馬にされつついろいろ突っ込んでくれる女の子、
北上イオちゃんが出てきます。

 

テーマは暗号(ミステリの消費のされ方)と探偵と助手の関係性(スーパー探偵は助手のことをばっちり理解してるので凡人助手は死ぬ気で頑張らないと失礼)でした。
(いろいろ理解するためにこのお話写経したいなァ)

 


なんたらの紐

「オレはともかく、大河に殺意を向けた罪は重いぞ。これからその身で贖え」
おそらくこの一文にやられたんでしょうね。メモにこれしか残ってませんでした。

 


白面の貴公子

論語登場。残り2つはキャラの印象が強すぎて話のメモがなかったです。
次の一文は読んだ時の感想。

あー!!!!????はー!!!!!???????論語かよおおおおおおおおおおおお

いやいやびっくりしすぎやろ自分。
ただ論語ってこんな邪悪ポジでしたっけ……。
ルヴォワールのときは甲斐田ゆきの声で「僕と彼女との素敵な恋の話ですよフフッ」
って言いそうな美しい少年だったはずでは……。

 

論語からの視点では大河と獅子丸は壊したいくらい仲がいいの信頼関係だそうで。
キングレオ時空の論語の思考回路はわけわかんないですね……。
平和な世界をあえてぶち壊したい、なんていうやつなんだ。
逆にこの話から獅子丸はギャグテイストも入りつつ、
陽虎ちゃんのボーイフレンド論語を抹殺しようとするモンペ。
さいきょうの陽虎ちゃん警察ですね。

 


虚堂の偏屈家

そんなこんなで論語に振り回されつつめくった次のページで衝撃の展開。
祖父殺しの疑惑をかけられる論語
そんな陽虎を使って獅子丸に嫌疑を晴らしてもらおうとする論語
これだからお前ってヤツは……。
それにしても陽虎ラブ、論語ヘイトな獅子丸が邵可さまラブ、王家ヘイトな黎深さま(彩雲国)
とかぶってしんどい。キレると本音ペラペラなの愛おしいですね。
閑話休題
この取引、論語
獅子丸が失敗→陽虎に失望される
獅子丸成功→大河の小説トリックを用いる→獅子丸が大河の夢を邪魔することになる
獅子丸成功→小説トリック→イオが原稿流出させたと嘯くことで公社の力が削がれる
獅子丸成功→そもそも最初の決断をした河原町義出臣の論理を破ることになり、恩師を破ることになる
と徹底的に獅子丸になにかを犠牲にさせようとしてるんですよね。なんて悪党なんだ。
最終的には獅子丸は義出臣を捨てることになってしまうんですが、
あの獅子丸が「河原町のジイさま」と愛称で呼んでいたのがツラい。
なついてたんですよね。稽古もつけてもらってたし。
こじつけでもなく正真正銘犯人ではあるものの、獅子丸の手で解き明かすのがしんどいです。

 

最後の会話で、また大河は助手をやめ作家になろうとすることを獅子丸に宣言します。
今回は大河の考えたトリックをうまく論語に使われた負い目があるので
大河は本気でなんとしてでもやめるつもりでした。
それに対して獅子丸の最初の反応が冗談めかして笑いながら返事をするというもの。
人間くさすぎる。
オレは完璧だから必要ないとか言わないんですよ。こういう強くないところがあるのは卑怯。
「確かにオレは探偵として完璧かもしれないが、探偵は一人で完璧になるわけじゃない。
 助手のお前がオレを完璧だと思ってくれているからこそ、オレは完璧になるんだ。
 下手に鼻っ柱の強い生意気な助手が来たら、オレは完璧ではなくなってしまう」
このセリフは踊る人魚で大河がイオちゃんに語ったことの返事ですかね。
レオ様人間が出来すぎてる。
そうしてお互いに確認し合った後新たなる謎へ立ち向かっていくのかっこいいですね……。

 


はぁ獅子丸……。
はやく2巻を……。
シリーズ化はよ……。
ゆーふぉでアニメ化はよ……。
獅子丸は関智がいいです……。

あと、獅子丸がいつか「俺たち親友だろ」って言ったらウケますね。(ウケない)

 

2019年10月追記:福山潤櫻井孝宏でもいいですね。ゼロレクイエム(概念)やりそうだし