○○○○○○○○殺人事件/早坂吝

著者の早坂吝さんはこの作品でデビューされています。
本作はノベルスと文庫があり、文庫版では冗長だった情景描写が削られ、

題名あての練習用の章が追加されています。(作者あとがきより)
以下、講談社サイトより引用したあらすじ。

『○○○○○○○○殺人事件』早坂 吝|講談社ノベルス|講談社BOOK倶楽部

『○○○○○○○○殺人事件』(早坂 吝):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部

 

講談社ノベルス(2014/9/4)

 

○○○○○○○○殺人事件 (講談社ノベルス)

○○○○○○○○殺人事件 (講談社ノベルス)

 

 

第50回メフィスト賞受賞作は前代未聞の「タイトル当て」!!

――必ず騙される。これぞ究極の本格ミステリー!

アウトドアが趣味の公務員・沖らは、フリーライター・成瀬の

ブログで知り合い、仮面の男・黒沼が所有する孤島で

毎年オフ会を行っていた。

沖は、今年こそ大学院生・渚と両想いになりたいと思っていた

が、成瀬が若い恋人を勝手に連れてくるなど波乱の予感。

孤島に着いた翌朝、参加者の二人が失踪、続いて殺人事件が!

さらには意図不明の密室が連続し……。
果たして犯人は? そしてこの作品のタイトルとは?
(※真相とタイトルが分かっても、決して人には話さないで下さい)


講談社文庫版(2017/4/14)

 

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

 

 

「ミステリが読みたい! 2015年版」(早川書房)第1位!

(国内篇 新人部門)

「タイトル当て」でミステリランキングを席巻した

ネタバレ厳禁の第50回メフィスト賞受賞作

麻耶雄嵩さん驚嘆!

「ロジカルな思考に裏打ちされた手筋の確かさと豊かな発想力」

(解説より)

アウトドアが趣味の公務員・沖らは、仮面の男・黒沼が所有する

孤島での、夏休み恒例のオフ会へ。

赤毛の女子高生が初参加するなか、孤島に着いた翌日、

メンバーの二人が失踪、続いて殺人事件が。

さらには意図不明の密室が連続し……。

果たして犯人は? そしてこの作品のタイトルとは?

 

 

以下、読了後の感想。
全体的な感想を一言にすると「すごく丁寧につくられた謎解き」でした。
この作品はフーダニット、ハウダニットワイダニットといった従来の謎解きでなく、

「タイトルをあてる」ことを読者への挑戦として提示されています。

文庫版では1章のあとに例題としてタイトルを当てる挿話が加筆されているので

読者としてもこの挑戦は受け入れやすいです。

 

「タイトル当て」ならばミステリでよく問題にされるヴァン・ダインの20則や

クイーン問題あたりに答えを示せるなぁ、このアプローチがあったかと驚きました。

探偵犯人の構図をいじるのは新本格によくあるけど、2000年代以降は

謎のほうをいじるのが流行りなんですかね?

円居挽の丸太町ルヴォワールも謎解きを弁論バトルへと変えてた。

……ような気がする。(あまり新しいのは詳しくなくて…)

 

また魅力的だがくどすぎないキャラクター(らいち除く)が

who,how,whyを考える際に面白さを倍増させていると思います。

まぁ冷静にあらすじ読み返したらそのまんまなんですけど。

単純な分、ミステリ初心者の人にもとっつきやすいです。


ただメフィスト賞受賞作だけあっていい意味でもわるい意味でも「ザ・メフィスト賞」です。

ミステリを普段読んでいる読んでいないはこの本にはあまり関係しませんが、

とある方面がダメな人はダメです。

そういう意味でもメフィスト賞にふさわしい一冊だと思います。

 

 

追記からはネタバレ含めた感想。

麻耶雄嵩「夏と冬の奏鳴曲」「隻眼の少女」にも触れてます)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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登場人物メモするときに絵も描いてるけど、重紀からサボるんじゃなかったー!!!

が最初の感想。

深景は黒のレースの描写があるのに重紀にないのおかしいな~

まぁ黒いんやろ、らいち驚いてるけど仮面が変な形してるんやろか~

で雑に飛ばしたのが悔しいです。

本当にあのページで少し考えればよかった。

あと題名あては完全に忘れてました。

 

who,how,whyは

「仮面」はあやしいし

仮面だからこそアリバイなんてないも同然だし

お金持ちだし

のゴテゴテの王道で、でもそれを本筋としていないからこそ王道にすることで

思考リソースを割かずにすんでるのがいいなぁと思いました。


題名あては文庫版で加筆されてるのが本当に親切。

例題⇒基本問題の流れは高校の数学問題集みたいです。

ストレスフリーでいいですね。

 

上で登場人物について少しふれましたが、「孤島」に「白いワンピース」の渚に

麻耶雄嵩「夏と冬の奏鳴曲」の舞奈桐璃が脳内を一瞬よぎりました。

まぁ清楚さの演出だけやろうと思いつつページをめくると

傍若無人だが一応礼儀正しいらいち登場。

メフィストだしこういうのでてくるよなぁとなんとか納得しようとしつつ、

同時にあっこいつヤバイぞと警戒心も高まります。

でもこれも読了後から見るといいバランスだなぁと。

 

5章では友達を亡くし涙目のらいち。語り手健太郎に寂しいと迫ります。

ここで脳内信号止まりません。

麻耶の美少女を思い出せ!!

あいつら鬱人間とセックスしてなにした!!!

という気持ちと

渚はどうした!

健太郎を殴りたい気持ち。

5章にくるまでの大なり小なりのあるある(序盤の健太郎は無気力人間など)

で盛り上がって麻耶が脳内にチラつきながらのこれは高まりますね。

(単に私が麻耶雄嵩好きなのはあります)


解決編でのらいちは

メルカトルの倫理観のなさとえげつない人脈

哀川潤のスーパー人間感

を思い出しました。

西尾維新クビキリサイクルしか読んでないので赤髪に引っ張られてるだけ

かもしれないです。

いやぁ探偵役はこれくらいぶっ飛んでる方が気持ちいいなぁ!


全体を通してなにか思い出しつつそれがいい意味で作品内に使われているのが

個人的に好きです。

ルヴォワールで龍樹がでてくるのはあまり受け入れられなかったので。

 

エロバカミステリなんて言われてたりもするらしいんですけど

確かに特徴的な部分を誇張するなら、人によってはそういうまとめになりそうです。

エロはまぁらいちがビッチだしなぁ……

バカの部分はなんでしょう、全裸?ピックのもう一つの隠し方?

あとから考えてみれば馬鹿馬鹿しくても読んでいる最中気づかずにいたのなら

それは作者の技量がそれだけすごかったんだと思います。

個人的にはバカとは思わないけど、メフィストっぽいって意味で“バカ”ミスかなぁ

 

【まとめ】

犯人:浅川史則

動機:金に困って

トリックなど:仮面の主人と入れ替わり、ヌーディストの集団なので仮面にしか凶器を隠せない、針と糸は密室の作り方と包茎手術の二重の意味