スノーホワイト/森川智喜

続けて京大ミス研出身の作家さん。

 

スノーホワイト (講談社文庫)

スノーホワイト (講談社文庫)

 

 

あらすじ(裏表紙より)

「真実を映し出す鏡」を持つ反則の名探偵・襟音ママエは、

舞い込む事件の真相は分かるが、推理は大の苦手。

ある事件が縁で顔を合わせた探偵・三途川理が、

窮地に陥れようと策を練っていることも知らず──。

おとぎ話のような愛らしい世界で、鋭い論理バトルが

展開される、第十四回本格ミステリ大賞受賞作

 

題名の通り白雪姫がもとになっており、語り手のグランピー・イングラム
探偵ママエの助手であり小人です。
本書は二部構成になっており、

  • 第一部──襟音ママエの事件簿──
  • 第二部──リンゴをどうぞ──

から成っています。

 

第一部では鏡を使ってママエが3つの事件に立ち向かいます。この3つの事件では
ママエは鏡を使い「神」の視点からママエ自身は直接知り得ないことを知ります。
それをうっかり喋ってしまうのですが、それをどうこじつけるか、論理を矛盾なく
通すかといった弁論バトルになります。
これは推理を犯人探しに至るまでの証拠列挙、論理的な説明といった従来の形でなく、
いかにそれっぽい論理を相手に納得させるかといった形ですね。
円居挽「丸太町ルヴォワール」の双龍会みたいな。
個人的にはこういった弁論バトルはそんなに好きではないのですが、3つの事件で段階的に
ママエが上手い理屈をつけたりつけなかったりしていくので呑み込みはしやすいかと。

 

第二部からは、三途川陣営 VS ママエ陣営の話になります。
ここからはミステリというよりかは冒険小説、サスペンスの気分で読んでました。
三途川がワルイヤツ、ママエが純真少女なので、乱歩の二十面相と小林少年のような構図です。
また、三途川理、緋山燃という2人の探偵が出てきますが、
この二人の関係性は腐女子が喜ぶやつだなぁと思いました。(ごめんなさい)
ハチャメチャ畜生三途川が緋山に執着しているんですが、ここがおいしいところ(たぶん)。
畜生探偵といえば麻耶のメルカトル鮎が浮かぶんですが、
メルは「自分は銘探偵。他?さぁ」といった感じで、他の探偵は興味がなく一次元下に見ています。
一方、三途川はというと、緋山の探偵としての力を認めつつ(一応自分の方が上と言うが)、
同次元で争っています。言っちゃなんだけど小学生かよ。
ここは個々人の好みだと思うんですが、私はチートキャラが好きなので
メルのようなタイプの探偵が好きです。
探偵じゃないけどFateギルガメッシュとか東方の八雲紫とか。

 


追記からネタバレ含む感想

 

 

 

 

 

 

 

 

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ワクワクした。最後まで考えずに勢いで読んで正解だった。
が最初の感想。
というのもママエが持ってる鏡が綺麗な形の「破片」だと思いこんでたんですね。
「あれ?もしかして手鏡だったりフレームが存在する?いやそれならママエ気づけよ。
 だいたいいくら意気消沈してるからってなんでお決まりの呪文言わないんだ。」
後出しジャンケンですが思いました。
まぁ上でも言ったように主人公と悪党、追われる側と追う側というようにはっきりしているので
ドキドキ感を大事に読んでいきました。
追う追われるなら我孫子武丸「狼と兎のゲーム」がありますが、
あれよりは冒険、ワクワク感マシマシといった感じです。
小人といったファンタジー要素の為ですかね。

 

ファンタジー要素からの連想で小林泰三「アリス殺し」も思い出しました。
そのせいもあって途中から小人になにかネタがあるかとおもって注意して読みましたが
特に思いつかず。実はこちらの世界もおとぎ話の世界でした(作中作に近い?)とか
小人と言ったなあれは嘘だ(あちらの世界の小さいの概念がこちらでは普通に大きい)とか
そんなレベルの陳腐なもんじゃなくてよかったです。

 

登場人物の話。
ママエはあんまり好きじゃないです。
緋山のときにようやく動いたのもプロットの辻褄合わせかな???と思うくらいだったので。
探偵じゃなくてお悩み相談所屋さんくらいだったら好感持てた気がします。
数々の探偵が背負ってきた重みを考えずに遊びで探偵始めたように見えたのがよくない。
小人さんことグランピー・イングラム。優秀な助手すぎる。
語り手としての性質上あまり個性強くなかったので思い入れもなく読み終わってしまいました。
探偵、緋山燃。つよすぎる。かっこいい。
探偵、三途川理。あんまり好きじゃない……。
ペラペラ喋るからすっごく頭のいい人が浮かれてるのかなみたいな。
超越的な天才キャラのチートさとは違うしなぁ……。
あと一般市民も巻き込もうとしてたのが個人的にナンセンス。
あんなに緋山に粘着するなら緋山だけを狙ってみてほしかった。

 

全体的に鏡がチートすぎて推理して読むのは面倒でしたが、
犯人との攻防のワクワクを楽しめた小説でした。

 


【まとめ】
第一部──襟音ママエの事件簿──

  • CASEⅠ:机にもネタがあるマジック(コーラが揺れる)。
    生徒全員グルだったため座る位置の調整が必要だった(上座に座らせない)。
  • CASEⅡ:依頼者が言っていなかった友人の存在。
  • CASEⅢ:三途川の自作自演(が行われるはずだった)。

第二部──リンゴをどうぞ──

  • 三途川がママエの事務所を訪れた際の珍妙な行動はダイナへのメッセージ。
  • また、真実を映す鏡を割っておらず、後ろの背景を映すよう鏡に命令していた。
  • 集中治療室は「4=死」を除いた分の部屋数があったので
    小人は三途川達のホテルも監視していた