シャーロック・ノートⅡ 試験と古典と探偵殺し/円居挽

シャーロック・ノート 学園裁判と密室の謎/円居挽 - 徒然の第2弾。

 

シャーロック・ノートII: 試験と古典と探偵殺し (新潮文庫nex)
 

 


あらすじ

鷹司高校で起きたカンニング事件。
剣峰成と太刀杜からんは、疑惑をかけられた少女、時巻暦の調査を開始する。
だが、事件を解決したと思ったのも束の間、カンニングの新たな証拠が見つかり、
真偽は生徒会裁判“将覧仕合”へと委ねられることに。
激突する論理と論理。反転し、眼前で姿を変える真実。
そして、伝説の名探偵・金田一が参戦し……。
青春×本格ミステリの新機軸、第2弾。

 


第一章は正典部に属する暦が試験のカンニング疑惑をかけられる話。
第二章は正典部の部長の殺人計画の話。
第三章は暦のカンニング疑惑が再び。生徒会裁判で明かされる真実とは──。
の流れです。
第二章、第三章で探偵は何を救うのか、正義とはについて触れていて
とてもおもしろかったです。

 

また学園の生徒が多く出てきます。
ぶっちゃけ寝る直前に読んでたのもあってあまり名前を覚えられなかったんですが、
まぁなんとかなります(ほんまか)。
第一章、第三章はまどまどしい(でっちあげでも論理が通ってたらOK)。
第二章とエピローグは本格寄り。特にエピローグは悪と探偵との攻防。
いろいろ喋るとすぐネタバレになりそうなので追記にて。

 

以下、ネタバレ感想。

 

 

 

 

 

 


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第一章 試験と名探偵

ここでのちょこまかしたことが三章に効いてくる構成は見事だと思います。
以下、気になったセリフをつらつらと。

 

「何でも持ってるお前に私の何が解るんだよ! 私には勉強しかないんだ。それでも勝てないならこうするしかないだろ!」(暦)
エリートの残や浅葱が同じクラスにいて、実技では全然好成績を取れない。
これでは探偵になんて到底なれない。
そんな暦が特究生の成に投げかけた言葉。
実際は成は勉強は(少なくとも現時点では)てんでダメなんですが
外野にはそんなこと分からず。
いろいろ刺さるものがありますね。

 

「綺麗事が厭なら利用すべき相手と言い換えてもいいんですよ。例えば誰かから技術を習う。その代わりにあなたは持っている知識を与える……そんな程度のギブアンドテイクでも、たった一人で学ぶよりはよっぽどマシです」(我聞)
知識もなければどうすれば…………おしえて台場せんせい……

 

「(略)
 君の理屈では無謬の人間しか正義を執行する資格がないことになります。
 (略)
 だから法があるんです。認められた者が定めるルールのもと、ただ正義を執行する……実に明快でしょう」(我聞)
無謬の探偵……メル鮎……メルカトルと正義の字面、喧嘩しすぎてて笑えますね。
後半は台場先生の考えは「法に則ったものが正義。それに基づいて探偵は解決すべし」
ということなんですかね。エピローグ読んでからみるとまた違った趣。

 


第二章 古典と名探偵

殺 人 計 画(すっとぼけ)
最初はこんな状況なら広之も凱殺したくなるよなぁと思いました。
が、どうも広之の殺意が薄いのがひっかかり再考。
あっ、これ広之先輩 自分が死ぬ気だ
とギリギリで気付きました。

 

金田一先生の事件の解決方法は犯行の瞬間を押さえるのでも凶器を奪うのでもなく、
全貌を見通した上で釘を刺す、諦めさせるというもの。
これは事件に対して後手に回りがちな探偵の性質とは真逆のものです。
これは犯人によっては無理やろwwwと思わないでもないですが、
ここまでの青春ミステリの文脈からは全く気にならなかったです。

 

金田一先生の考えは
「探偵は正義の二文字を背負った上で人の心を知り尽くし
 相手の心を折らないギリギリで観念させる。
 自分は誰かを救うためにこの力を使っている」
というもの。ザ・名探偵で格好いい。

 

 

第三章 学園裁判と名探偵

時巻暦、芥山残、千草浅葱など登場。
裁判パートの前半はまっどまどなので割愛。後半から。

 

祖父忌一郎にほぼ虐待でしごかれていた残。
そんな残が出来損ないの、特別扱いの暦や成を陥れた犯人か……
と同情しつつ結末へと向かう中、
なんとここで真犯人がいると考える成。
ここでの成の考えは
「疑われている人間が好きとかきらいとか関係ない。
 私欲で次元を区別する人間は探偵ではない。
 いま学園にいる自分を含む皆の考えはいかにも、な残が犯人だというものだが、
 真犯人が分かった以上探偵を目指す自分は真犯人を明かさなければならない」
というもの。
また、真犯人告発の論理の肝はそう簡単に選択式の試験で“ゼロ点”は取れない。
そのことから試験を配った担任──台場我聞が犯人としました。

 

試験問題が処分されることから証拠として示すことはできないので、
残りは台場先生の証言だけになります。
何故したかというと、今までの探偵になった教え子は自分のポテンシャルを超えて
成長したため事件で潰れてしまった。
そんなことになるくらいなら学生のうちに潰れておいたほうがよいというため。
なんてサイコパス野郎だ。
そう思ってたら驚きのこのセリフ。
「実のところ、台場我聞というのは仮初めの身分に過ぎません。私は元犯罪者、本当の名前をゼノグラシアといいます」
エーーーーーー
第一章で言ったように“いい先生”だったので普通に悲しかったです。

 

また個々のキャラクターの話ですが、なんだかんだ祖父を殺せなかった残は好きです。
あと、身内がやってくるのを授業参観と評した佳城さん。
シャーロックノートⅢに獅子丸が登場するらしいですけど(まどい先生ついったーより)、
五条の保護者ヅラする獅子丸が気になりすぎる。

 


エピローグ

ゼノグラシアとボス(仮)との会話。
正義と正義の味方の違いについて、
正義は正しいもの、正義の味方は正義にすがるが正義を恐れるものがとる立場
と答えるボス。
そしてゼノグラシアたちが倒され、ボスが待ち望む探偵は正義を体現したものとのこと。
巻が進むにつれてここを読み返す回数が増えそうです。
あと待ち望んでる、という言葉と名前からボスは明智校長先生をひとまず疑ってます。

 

また護送車での金田一とゼノグラシアの会話では、
ゼノグラシアの本当の狙いは九哭将の無力化ということが明かされます。
将覧仕合で自分が告発されない、すなわち嘘の結末へとたどり着いたら
頃合いを見て真実を告発。
たかが高校のいざこざすら見抜けない九哭将は、
他からの承認で力を得る探偵としての力は弱まる。
というもの。
どこまでも探偵を陥れようとしていていいですね。
一巻の残月は最後「成くん……///」って感じだったので、
ゼノグラシアは完全に悪役なので好きです。

 

暦と残の会話で突然天然記念物レベルにボケ連発する残。
急に萌キャラになって可愛いですね。
週刊少年ジャンプならで中盤で敵だけどすぐに仲間になるタイプ。

 

 


とりあえず五条の保護者ヅラする獅子丸がみたいので三巻はやく出てほしいです。